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最新科学が明かす 明和大津波

美しい海が脅威に変わる 巨大津波の全貌!

1771年4月24日、現在の沖縄県先島諸島を中心として 大地震の揺れに見舞われ、直後に津波が来襲した。 この津波による犠牲者数は約1万2000人にものぼり、 日本(琉球)史上でも、有数の津波災害であった。

240年以上も前の明和大津波が、国内外で再び大きな注目を集めている。 明和大津波が多くの研究者を魅了する最大の理由は、 古文書や地質記録が提供する謎に満ちた断片的な情報から、 240年以上も前の津波被害の実態を明らかにするという作業に、 まるで上質のミステリーを得化のような学術的興味深さがあるからであろう。

本書では歴史学、地質学、考古学、津波工学の専門家および郷土史家が、 最新の学術成果を踏まえ津波の全貌をわかりやすく解説。
2011年東北地方太平洋沖地震津波の復旧・復興の参考に、 そして、将来の津波発生にいかに対処すべきかの参考になることを願う。

目次

一章 緒言(正木譲・島袋綾野・後藤和久)

二章 明和大津波の被害概要と復旧・復興(得能壽美)

二.一 明和大津波を記述した史料の存在  14
二.二 明和大津波の発生状況  18
二.三 被害状況  21
二.四 明和大津波後の救助・復旧・復興  26
二.四.一 発生直後  26
二.四.二 初期の救助活動  28
二.四.三 村の復興策  30
二.四.四 長期化した復興  36

三章 八重山諸島における津波遡上高と挙動(島袋綾野)

三.一 古文書に記載された遡上高と津波挙動  42
三.二 遡上高に関するこれまでの研究  43
三.二.一 牧野清著『改訂増補 八重山の明和大津波』  44
三.二.二 『八重山の明和大津波』にみる津波の進入状況  45
三.二.三 検証作業の始まり  48
三.二.四 津波石をめぐる論争  49
三.三 被害実態に基づく遡上高の再考  51
三.三.一 古文書記録を元にした現地確認  51
三.三.二 伝承とその検証  54
三.四 精密測量に基づく八重山諸島での遡上高の再考  58
三.四.一 四ヵ村(新川、石垣、大川、登野城地区)  58
三.四.二 石垣島南部~東部の南岸(平得、真栄里、大浜、宮良、白保地区)  60
三.四.三 石垣島東部~北部(桃里、伊野田、伊原間、安良、平久保地区)  63
三.四.四 石垣島西部(旧桴海村、川平地区、底地地区)  66
三.四.五 石垣島中部~南部西側(屋良部崎、シーラ、冨崎地区)  67
三.四.六 八重山諸島の他の島々での遡上高(竹富島、黒島、
新城島(上地)、西表島、波照間島)  68

〈コラム一〉 牧野清と明和大津波  70
〈コラム二〉 二八丈二尺と八五・四メートル  71
〈コラム三〉 ナンヌンドゥクードー(津波が来るぞ)!  72

四章 宮古諸島における津波伝承と明和大津波(本村育恵)

四.一 「旧記」の中の津波  79
四.一.一 宮古の「旧記」について  79
四.一.二 「旧記」の中の津波  80
四.二 「旧記」記載の津波関連記事へのアプローチ  84
四.二.一 慶世村恒任と稲村賢敷  84
四.二.二 民俗学・神話学から  85
四.二.三 歴史学・考古学から  88
四.三 津波を呼ぶ母性  90
四.四 災害と信仰  93
四.五 「事実」が語られる明和大津波  94
四.五.一 地元宮古の記録  94
四.五.二 王府の記録  100

五章 津波石 ~巨大岩塊が動いた(後藤和久)

五.一 古文書に記載された津波石移動現象  109
五.二 実存する津波石  111
五.三 石垣島大浜の津波大石は明和大津波起源なのか  114
五.四 津波石の見分け方  116
五.五 地形やサンゴ礁への影響  120

六章 考古学的観点からみた明和大津波(島袋綾野)

六.一 なぜ、遺跡は見つかりにくいのか  124
六.二 四ヵ村 明和大津波の津波堆積物層が見つからない理由  126
六.三 発掘調査で見つかった明和大津波・その他の津波の痕跡  129
六.三.一 嘉良嶽東貝塚(石垣島)  131
六.三.二 嘉良嶽東方古墓群(石垣島)  131
六.三.三 盛山村跡(石垣島)  132
六.三.四 白保竿根田原洞穴遺跡(石垣島)  132
六.三.五 友利元島(宮古島)  133
六.三.六 砂川元島(宮古島)  135
六.四 遺跡から明和大津波の遡上高を考えるヒント  136

〈コラム四〉 遺跡が教えてくれるもの  138

七章 津波はどこで発生したのか ~明和大津波の波源問題(後藤和久・今村文彦)

七.一 各種の波源モデル  144
七.一.一 地震断層モデル  144
七.一.二 地震断層+海底地すべりモデル  145
七.一.三 石垣島北西沖の胴切り断層  146
七.一.四 海溝型巨大地震(津波地震)モデル  146
七.二 地震の揺れは小さかったのか  147
七.三 津波の到達時間と遡上高  149

八章 繰り返す先島諸島での巨大津波(島袋綾野・後藤和久)

八.一 歴史資料にみる明和大津波以前の地震・津波  154
八.二 地質学的証拠が明らかにした先史津波  156
八.三 考古発掘現場で見つかる明和以前の津波痕跡  158
八.四 八重山先史時代の謎  159

九章 将来の巨大津波に備える(後藤和久・今村文彦)

九.一 将来いつ起きるのか  164
九.二 どのように対処すべきか  165
九.二.一 地震が起きたら  166
九.二.二 いち早く安全な場所に避難を  167
九.二.三 観光客の避難誘導  168
九.二.四 船上での対応  169
九.三 島嶼に特徴的な津波挙動  170
九.三.一 島周りの波の回折  170
九.三.二 リーフ保全の重要性  172

一〇章 明和大津波痕跡巡り(宮城邦昌)

一〇.一 八重山諸島編  180
一〇.一.一 石垣島  180
一〇.一.二 黒島  191
一〇.二 宮古諸島編  192
一〇.二.一 宮古島  192
一〇.二.二 池間島  193
一〇.二.三 伊良部島・下地島  193
一〇.二.四 多良間島  195
一〇.二.五 水納島  196

謝辞  198

 

著者一覧(五十音順)

●今村文彦
東北大学災害科学国際研究所所長・教授。専門は津波工学。著書に『東日本大震災を分析する1-地震・津波のメカニズムと被害の実態-』など。

●後藤和久
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授。専門は地質学。著書に『巨大津波 地層からの警告』(日経プレミアシリーズ)など。

●島袋綾野
石垣市八重山博物館。専門は考古学。

●得能壽美
法政大学大学院講師。専門は歴史学(近世史)。著書に『近世八重山の民衆生活史-石西礁湖をめぐる海と島々のネットワーク-』(榕樹書林)など。

●正木 譲
元南大東島地方気象台台長。現八重山明和大津波研究会会長。

●宮城邦昌
元石垣島地方気象台職員。

●本村育恵
沖縄県教育庁文化財課史料編集班専門員。専門は歴史学(東洋史)。

著者よりコメント

 後藤和久・島袋綾野編である同書は、これまで主であった古文書を使った文献史学の視点だけではない、学際的な内容が特徴となっています。具体的には、地質学、津波工学、文献史学、民俗学、考古学といったさまざまな視点となります。

このような学問上の研究は、論文という形での発表は多くありましたが、論文は一般の方にはハードルが高く、かつ一つの分野ごとに個別に報告されている現状がありました。本書では、それらの情報をできるだけ一般の方にも共有できるように各章の担当者がまとめています。 また、明和大津波の名前を一躍有名にした牧野清さんの高著に『八重山の明和大津波』がありますが、同書は科学が進歩した現代では、一部、否定される内容も含まれます。例を紹介しますと、現地での位置情報などを利用した遡上高の検証などです。

地図上では、あまり高低差がないように見えても、現地に行くと複雑な地形があったり、いくつもの段丘があったりします。各家に残された津波の伝承などを精査すると、こういった地形が、生死を分ける重要な要素であることがわかるのです。

本書をまとめるにあたり、主要な著者の一人である後藤和久は、海岸に残された5000個以上の津波石を調べ、現地調査とGPSを活用した位置情報の記録保存に努めました。そして、学術的な部分だけでなく、これらの成果を今後の防災・減災に取り入れていただこうという提言も述べています。

沖縄・八重山文化研究会会報第262号(2020年2月16日)」より転載

「震災の記憶を忘れないために 後藤和久・島袋綾野 編  最新科学が明かす明和大津波」

2011年3月11日の東日本大震災の記憶は、連日テレビで報道されたこともあっていまだに生々しい。マグニチュード9.0という途方もない地震は巨大な津波を生み出し、最大遡上高四〇メートル以上に達したという。家々が津波に押し流され飲み込まれていく光景は、「壊滅的」という言葉以外みつからないほどであった。
1771年(明和八年・乾隆三六年)四月二四日に宮古・八重山を襲った津波もまた甚大な被害をもたらした。推定マグニチュードは7.4から8.7とされる。地元では「津波大石」が国天然記念物に指定されたり歴史的な記憶を呼び起こすための毎年の慰霊祭なども行われている。しかし「明和大津波」の実態や被害の状況については意外と知られていないように思える。
いま、なぜ「明和大津波」なのか。本書の第一章「緒言」(正木謙・島袋綾野・後藤和久)に「明和大津波に関する研究はここ十年ほどの間に大きく進展し」てきたが、「研究成果は国内外の学術誌で頻繁に公表されているものの、一般市民が読める形では整理されていない」とし、「大きく進展した明和大津波の研究を、最新の学術成果を踏まえて整理し、再度体系化」することが目的であると記す。本書は、2011年の大地震を忘れないために、それを教訓とするために著者である後藤和久氏の言を借りるなら「正しく恐れ」「正しく備える」ために編まれたものである。
本書はタイトルにもあるように、歴史学、地質学、考古学津波工学などのそれぞれの専門家たちが歴史文献や地質調査などから、明和大津波の実態と被害の状況を明らかにしていく。
第二章「明和大津波の被害概要と復旧・復興」(得能壽美)では、古文書から津波の発生、救助・復興の状況を読み解く。第三章「八重山諸島における津波遡上高と挙動」(島袋綾野)では、精密測量に基づく八重山での遡上高について、各村ごとに検討する。第四章「宮古諸島における津波伝承と明和大津波」(本村育恵)では「宮古島旧記」のなかの「津波」を描き、第五章「津波石~巨大岩塊が動いた」(後藤和久)では、実在する五千個以上の津波石の現地調査を行い、GPSを活用した位置情報記録をもとに津波石の移動について述べる。第六章「考古学的観点からみた明和大津波」(島袋)では、遺跡から津波の遡上高を考察。第七章「津波はどこで発生したのか」(後藤・今村文彦)では波源モデルをもとに明和大津波の発生源を推定し、第八章「繰り返す先島諸島での巨大津波」(島袋・後藤)では「明和大津波」以前にも地震・津波があったことを地質学的な記録から明らかにし、第九章「将来の巨大津波に備える」(後藤・今村)第一〇章「明和大津波痕跡巡り」(宮城邦昌)と続く。
現実的な問題としてぜひ読んでほしいのは、第九章である。自身がおきたらどのように対処すべきなのか、島嶼件である沖縄の場合特に大事な防災のための自然保全は何かについて提言している。本書は、多くの専門分野の論文をあるめたものでありながら、一般読者向けにコンパクトに作られている。多くの方に手に取ってほしと思うと同時に、本書の成果が今後の防災に役立つことを心から願いたい。

2020年3月15日 産経新聞書評

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著 者:後藤和久・島袋綾野[編]
発 行:南山舎
本仕様:A5判
頁 数:200頁

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